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大衆業態に“馬肉”を組み込み、住宅立地で支持される業態を確立! 2012年12月23日オープンの「大衆酒場 さくら屋」

地下鉄新板橋駅とJR板橋駅を結ぶ通りに立地。これまで何もない裏通りだったが、多店舗展開する大衆店が先発開業して繁盛を築き、いまにわかに活気づく立地となっている。
カウンター席3席以外はテーブル席で構成し、2人以上の客をターゲットにする。椅子も丸椅子を使用するなど、気軽な雰囲気を打ち出す。
売り物商品の「さがりたたき」。焼酎はあえてメニューに載せていない、“4M”プレミアム焼酎の「萬膳」「村尾」「森伊蔵」「魔王」を揃え、通の客を楽しませる。
店主の桜井利亮氏。高級和食業態などで修業を積み、ふぐ調理師免許も取得。技術を生かした料理を大衆業態に落とし込んでいく。

(取材=印束 義則)


一見普通だけど、実は凄い。一見大衆店だけど、ちょっと贅沢。業態を明確にしていないようで、“隠れコンセプト”がある。そんな巧みな売り方で住宅街にそっと溶け込み、潜在客層の掘り起こしに挑戦しているのが、「大衆酒場 さくら屋」。都心立地に比べて客の絶対数の少ない住宅立地では、客層を限定するとがり過ぎた業態はなかなか受け入れられにくい傾向にある。例えば、特に変わり映えしない地味な店が意外に何十年と根強く残っているのが、その何よりの証だろう。住宅立地で大切なのは、敷居の低さと日常性。ここを外すと商売的に苦戦を強いられることにもなりかねない。逆に、きちんと押さえておけば、他店と色合いを変えた独自性も打ち出しやすくなる。 「さくら屋」はまず店名に「大衆酒場」と掲げることで、客に気軽な印象を与える。そして看板に「焼き鳥」「馬刺し」と売り物商品を書き記し、“焼とり”で日常性を、“馬刺し”で他とはちょっと違うものが食べられるという魅力を訴求する。差別化目的とはいえ、住宅立地で目先の変わった売り物を前面に出しすぎると、人は敷居の高さを感じたり、「それならいいや」と敬遠したりするもの。反面、「普通の店だけど、ちょっと変わったものがある」という店に対しては、警戒心を緩めて好印象を持ちやすい。売り物商品の見せ方、あるいは“入口”をどっちにするかといったアプローチの違いで、客の反応は全然違ってきてしまう。 提供する焼とりは日常性を出しながらも、ブランド鶏の宮崎・日向鶏を使用。メニュー表には「五本盛合せ」(650円)、「八本盛合せ」(1040円)と盛り合わせを目立たせ、その次に単品の商品名を載せることで盛り合わせの注文を促していく。脇を固めるメニューは「名物!鶏唐揚げ」(480円)などの“揚げ物”。「ホッケ開き」(480円)などの“焼き物”。「冷奴」(280円)などの“定番”。「ポテトサラダ」(380円)などの“サラダ”。「昔ながらの焼きそば」(580円)などの“お食事”等々。こうした商品だけを見ればまさに大衆酒場のメニューであり、客も気軽に利用しやすい。こうして安心感を勝ち得た上で、差別化メニューの馬肉料理を提供するのである。 馬肉は“サシの文化圏”の熊本より仕入れ、店頭に「熊本 馬刺」と書いた提灯を吊るす。メニュー表には「低カロリー・高タンパク質・低脂肪・高ミネラルな馬肉は、女性や健康を気にする方々にも適した食材として注目されています」と謳い、表面を炙って香ばしく仕上げた「さがりたたき」(580円)。ロース部位の「上馬刺」(680円)。上馬刺、さがり、たてがみを盛り合わせた「馬肉三点盛り」(1280円)の3種を供する。さらに馬、牛、豚を用いた「すじもつ煮」(480円)を提供。馬肉は生食可能という肉食材としての優位性やヘルシーさから、最近特に関心の高まっている食材である。同店ではその注目食材をほどよい品数でメニュー化し、専門性を強めすぎることなく「大衆店だけど、他とはひと味違う!」という魅力を上手に作り出している。 馬肉料理に加え、“特選黒豚料理”として「黒豚せいろ蒸し」(680円)、「ガツポン酢」(380円)、「黒豚とんこつ煮」(580円)、「豚味噌漬け焼き」(680円)の黒豚料理も供し、「気のきいたメニューのある店」として商品力に磨きをかける。さらに、刺身は“本日のおすすめ”として「マコカレイ刺」(590円)、「カンパチ刺」(590円)など、その季節のものを日替わりで提供。その他、季節の一品料理を“本日のおすすめ”で供する。同店は15坪という小規模店のため、立地特性や規模からそういたずらにメニュー数を増やすわけにもいかない。そこで、誰にも受け入れられやすい日常性の高いメニューをひと通り押さえた上で差別化メニューを取り入れ、ワンランク上の利用客を取り込んでいる。 アルコールは焼酎に力を入れ、メニュー表には40種近くの本格焼酎が並ぶ。また、各種4合瓶も揃えて飲み切り利用にも対応。逆に日本酒は、「日本酒も日替りであります」とPOPを貼り出すなど、種類を絞ることで上手に回転させ、品質の劣化を防いでいる。同店は店名に“大衆酒場”と掲げる以外、特に何の業態か明確に打ち出していない。だが、店側としては実は「九州」というコンセプトを設けており、決して何でもありの店ではなく、しっかりと核となるものを設けている。とはいえ、あくまでこれは“隠れコンセプト”であり、表に出すことはない。焼とりに日向鶏を用いるのも、馬肉や黒豚を提供するのも、焼酎に力を入れるのも「九州」というコンセプトがあるがゆえのもの。だが、「九州」と謳ってしまうとどうしても縛りが出てしまい、例えば安くておいしい九州以外の食材を用いようとした際などにブレが生じてしまう。そのため、あえて自由度を持たせることで柔軟に対応し、巧みに専門性を高めている。 同店を経営する桜井利亮氏は、高単価の和食業態などで修業を積み、当初はオフィス街で高級業態をやりたいと考えていたが、地元、板橋でいい物件が見つかったことから大衆業態へと方向転換。客単価も3000円と、大衆業態として無理のない価格に設定。それでいて高い満足感を味わえるコストパフォーマンスを打ち出し、日常利用にも、ちょっと贅沢な利用にも対応できる奥行きのある商売で差別化を図っている。店名の「さくら屋」は、自らの名前と馬肉の異称の“さくら肉を”かけたもの。桜の季節が過ぎても満開の花びらを咲かすであろう、一見普通だけど、実は凄い店。「大衆酒場 さくら屋」の住宅立地での挑戦が、始まっている。

店舗データ

店名 大衆酒場 さくら屋
住所 東京都板橋区板橋1-51-1 コーポ初雁1階

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アクセス 地下鉄新板橋駅から徒歩1分、JR板橋駅から徒歩3分
電話 03-5375-8175
営業時間 16:00~翌1:00(L.O.23:30)
定休日 月曜
坪数客数 15坪・35席
客単価 3000円
※店舗情報は取材当時の情報です。最新の情報は店舗にご確認ください。

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