■ここ最近の訪日外国人についての現状を教えてください。
2008年3月の中国での個人ビザ解禁により、中国人の訪日客が急激に増加しています。JNTO(日本政府観光局)によると、2008年度の訪日外国人は約835万人、そのうちの約600万人をアジア圏が占め、中国、台湾、香港からの訪日客が470万人に及びます。台湾だけで見ますと、全人口の5-6%にあたる約140万人が日本へ来ている計算となる。仮に中国の全人口で考えた場合、わずか1%でも1300万人というものすごい数になります。JNTOでは、2010年までに訪日外国人旅行者数1000万人を実現するという目標を立てていますが、将来的には500万人の中国人が安定して訪日する時代が来ると思っています(石氏)。
■具体的には、どんな層が日本に来ているのですか。
現状では、中国の個人ビザには日本円で350万円の年収がある人のみという条件がついているので、日本に来ているのは中国でも富裕層の下以上ということになります。バックパッカーたちとは違い、海外でもお金を使う人々なので、マーケット的には非常に取り込みたい層であると思います(石氏)。
■彼らの日本での消費行動にはどんな傾向がありますか。
滞在場所としてはやはり東京が圧倒的に多く、京都、大阪、次いで沖縄、北海道となります。訪日の主な目的としては、ショッピング、観光、食が挙げられますが、この食についての情報が中国では圧倒的に不足しているのが現状です。日本食に何があるかを正しく認識している人は少なく、多くの中国人が日本食と聞いてまず思い浮かべるのは「牛丼」です(笑)。ただ、日本にリピートしている富裕層は、もっときちんとした日本食を食べたいと考えており、弊社のサイトもそうしたリピーターをターゲットに情報発信しています(石氏)。
■日本では、海外旅行に行く際はガイドブックで情報収集をすることが多いですが、中国ではそうした情報源が少ないということですか。
そうです。中国では、日本のようにきちんとした観光ガイドブックは発達しておらず、掲載されている情報も、営業時間や電話番号が違っていたり、閉店した店が載っていたりとあまり信憑性が高くないので、情報収集はもっぱらインターネットが主流です。ブログ人口も増えており、日本の観光について書くブロガーも少なくありませんが、あくまで個人の情報なので、「日本のどこに行けばおいしい日本食が食べられるか」について客観的な情報を載せている専門サイトは弊社とほか数社とまだ少ないです。とくに焼きそばやたこ焼きなどのB級グルメや、食べ歩き、スイーツに関してはほとんど情報がありません(石氏)。
■「日本漫遊」さんは、中国での日本観光サイトの草分けと聞いています。ユーザーからは、具体的にどのような食情報が喜ばれていますか。
弊社でも食の情報に力を入れ始めてからはまだ4年ほどなのですが、リピーターが多いのはしゃぶしゃぶ、ふぐ、鍋料理、鉄板焼き、寿司などでしょうか。日本食のイメージとして強いのが、まず「刺身」なので、カニや中トロ、ふぐといったわかりやすいアイテムを提供しているお店は評価が高いですね。これまでもっとも反響があったのは、ふぐ鍋と中トロの刺身などが含まれた6,500円のコース。翌年はカニも入れて9,000円のコースにしたのですが、好評でした。また、食べ放題のシステムも好評で、サラダバーや焼肉食べ放題などのお店は人気です。また内装は、いかにも日本らしい和風のデザインが喜ばれています。日本酒のボトルをズラッと並べたディスプレーなども受けますね(石氏)。
■実際に、訪日外国人客を受け入れている「魚心 新宿総本店」では、どんな状況ですか。

やはり富裕層ということで、非常に上品な方が多いですね。会話が通じないといったトラブルや、クレームなどもほとんどありません。
「魚心 新宿総本店」は歌舞伎町にあるのですが、団体に対応できる個室がある上、彼らはバスで移動するので、バスが止めやすい場所にあることは非常に喜ばれますね。あとは、宿泊場所に近いエリアも喜ばれます。関西ではミナミ地区、キタ地区、東京では新宿、上野、池袋などでしょうか。弊社では、団体旅行の観光シーズン時には、関西と東京で月間約2000~3500人の団体客を受け入れており、1日平均でも約30~90人になるので、飲食店にとってはすごい利益になります。ツアー客の場合は、とくにさっと食べてすぐに観光に向かうので、例えば11時~とか、14時~とか、店側で時間を設定すれば、効率よく利益を上げられます(松永氏)。
■では具体的に、日本の飲食店が今後訪日外国人を集客していきたいと考えた場合、お店側の準備として必要なものは何でしょうか。
業態としては、寿司、しゃぶしゃぶ、鉄板焼き、天ぷらなど和食の業態はすぐに取り組みやすいと思います。そして、どこの国でもそうだと思うのですが、絶対的に必要なのは「ホスピタリティ」だと思います。外国の飲食店で、自国の言葉が伝わらず何とかジェスチャーでやりとりすることは日本以外でも多いと思いますし、中国のお客様を受け入れるために中国語のできるスタッフをわざわざ雇う必要はないと思っています。大事なのは、店側が真剣に訪日外国人客の必要性を感じていること。メニューが外国語表記でなくても、写真入でわかりやすくするとか、専用のコース料理を用意するなど、投資をかけなくてもできることはあると思います(石氏)。
「魚心 新宿総本店」では、短時間に大人数分を提供するために、「うな丼」を出したことがありました。店側にとってはオペレーション的に楽ですし、「どんぶり」という和食のイメージに加え、甘辛い味を好む中国人に喜ばれる味だったので、お客様にも大変好評でした(松永氏)。
■日本の飲食店では、禁煙化が進んでいますが、それも含めてトラブルやクレームになりやすいことはありますか。

日本の飲食店が禁煙ということは前情報として知っているお客様が多いので、それほど問題にはなりません。よく効くのは、ボリュームが少ないとか、ご飯のお替わりが有料だったのに聞いていないといったことでしょうか。中国ではご飯のお替わりは基本的に無料なので。また、クレームではないのですが、気を付けていただきたいのがメニューを翻訳する場合。直訳してしまうと、例えば「姿煮」が「死体の魚の姿」になるなど笑えない訳になってしまうので、翻訳するのであれば専門家やネイティブに精通している方にきちんと訳してもらうことをおすすめします(石氏)。
「日本も少子化が進み、経済が縮小化していくことを考えると、国の産業としてインバウンドをもっと真剣に考えていかなくてはならない時代が来ている」と語る石氏。訪日外国人への受け入れに不信感をもつ飲食店も少なくないだろうが、ここ数年の飲食業界において、就労を外国人労働者に頼らざるを得ない状況が続いていることを考えると、増加する訪日客を巧く取り込むことが業界的に必要となっていくことは今後間違いないだろう。しかも、訪日客の半数を占めるのは、個人の観光客。その中でも中国は、かなりまとまった数のターゲットだ。彼らに対し、世界的にも魅力をもつ日本の飲食業界をどうアピールしていくか。そこに新たなビジネスチャンスが待っている。
顧客開拓の新ターゲットとして注目の「中国系訪日観光客」の攻略ポイントから最新の動向など、インタビュー記事には掲載していない情報が満載の2時間。経済誌やTVからの情報ではもう遅い!最新の中国主要都市情報をお届けします。
会場:トライアンフ会議室-恵比寿
http://room.triumph98.net/room/
(株式会社 トライアンフ http://triumph98.com/)
渋谷区恵比寿南1-15-1 JT恵比寿南ビル2F
03-5723-2001(代)
JR山手線・埼京線・湘南新宿ライン「恵比寿」駅西口
日比谷線「恵比寿駅」1番・5番出口 下車徒歩3分
日時:2010年1月26日(火)14時~16時
セミナー時間 14時~15時半
質疑応答 15時半~16時
http://www.e-japannavi.com/
2001年に開設し、現在は1日7~8万のページビューを誇る人気サイト。日本の観光・宿泊・温泉・交通・ショッピング・グルメ情報などを世界の訪日中国人向けに発信している。
http://www.leaf-operation.co.jp/
関西地区では「あじびるグループ」として飲食店舗を約40店営業。
東京地区では「元祖 ぶっち切り寿司 魚心 新宿総本店」、「咲かせ鮨 花回廊」など4店舗を展開。