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コラム

「日本酒専門業態」の進化が始まった!

「日本酒の復権」「新地酒ブームの到来」などと言われるように、日本酒人気が再び沸きあがっているが、今回のトレンドで注目したいのは、銘柄や商品そのものよりも、新しいスタイルの「日本酒専門業態」の店が増えてきていることだ。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


実は私は日本酒が苦手だ。銘柄もよく知らない。しかし、2~3年前からじわじわと日本酒専門店が増え、このコラムでも新しい店を取り上げてきた。新橋に地酒専門店「野崎商店」がオープンしたのが2008年、オーナーの野崎さんはその後神楽坂に「かも蔵」、池袋に「裏や」と店を広げていった。野崎さんのもつ全国の地酒酒蔵とのネットワークは強い。それを活かした銘柄の豊富さ、レア感、ワインバーのような提供法には驚かされた。また、若い世代のオーナーが、日本酒に特化した店で独立するケースも増えた。吉祥寺の「にほん酒や」、西新宿の「兼ネル」、池袋の「希紡庵」、北千住「日本酒宿七色」、そして五反田「酒場それがし」など。これらの店を私は「新世代日本酒専門店」と名付けた。銘柄へのこだわりはもちろん、コンセプトもスタイルも新しい。もちろん「日本酒以外は飲ませないぞ」というオーナーの思いやメッセージ性が強い。ゆえにソーシャルメディアで「共感」を呼び、ファンが一気に増えた。私もその一人で、酒を楽しむというより、オーナーや業態に興味を持った。「新世代日本酒専門店」のコンセプトは、代替りしている酒蔵、杜氏たちにとっても、シナジーを感じやすい。専門店として軸をブラさないから、作り手にとっては組しやすい。「量」を売ってくれる店も大事だが、「質」を理解してくれる小さな専門店のほうがブランドを訴求しやすい。ある意味、クラフトビールと同じようなネットワーキングが「新世代日本酒」というコミュニティを生みつつあると言える。そしていま、「日本酒専門店業態」の進化が始まっている。専門性を崩さずに、より敷居を下げ、間口を広げた業態を提案する店が登場してきた。その一つが、1月24日に東急池上線「荏原中延」の駅前にオープンした「かもすや酒店」である。なんと全国47都道府県を網羅する日本酒を揃えた。居酒屋の造りだが、日本酒以外は瓶ビールしか置いていない。私が面白いと思ったのは提供法。すべての銘柄を半合で出してくれる。日本酒の苦手な私にもこれなら楽。無理せずに数銘柄を味わうことができる。価格もおおむね300円台が多い。注文すると、冷蔵庫から一升瓶を持ってきてスタッフが必ず説明してくれるのもありがたい。昨年12月に銀座にオープンした「ぎんます」も敷居が低い。約70種類の地酒をすべて0.8合で提供する。この店も日本酒の他には瓶ビールしか置いていない。フードも日本酒に合うアテが揃っている。「これを飲みながら日本酒を飲めば悪酔いはしません」と仕込水を180円で飲み放題サービス。とにかく「日本酒が苦手な人にも楽しんでもらいたい」という仕掛けが散りばめられている。経営は「築地 すし鮮」や「さかな道楽」などの魚業態、「うみんちゅ家」などの沖縄料理ほか50店舗を手がける魚家グループの最新業態だ。「かもすや酒店」も「ぎんます」も、幅広い層に日本酒の魅力を訴求したいという意欲を感じる店だ。日本酒トレンドは、地酒のプロの世界から始まり、新世代日本酒専門店へ、そしていまカジュアルで広がりのある日本酒専門業態へと進化していると言っていいだろう。ワイントレンドがカジュアル業態の進化によって一気に広がったように、日本酒もカジュアル化の波がいま起きつつある。2012年の飲食マーケットで注目したい動きの一つにあげておきたい。 

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