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コラム

2011年飲食トレンドを読む5つのポイント

2011年も外食企業にとっては厳しい1~2月が終わろうとしている。大型の倒産や居酒屋業界の不振が伝えられる中で、これからのトレンドをどう読めばいいのか、まとめてみた。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


2月22日、今年初めての講演を行い、2011年の飲食トレンドを読むポイントとして、私は次の5つを挙げた。1、低価格居酒屋競争が終結し、単価上昇現象が起きる2、「カジュアルワイン業態」マーケットが急拡大する3、新世代の「日本酒専門業態」が増え、日本酒復権へ4、「オンリーワンメニュー」で差別化する店が増える5、ソーシャルメディア本格到来が店と客の関係を変える「低価格競争」については消耗戦が指摘されていたが、やはりその競争を仕掛けた三光マーケティングフーズの大幅減収に見られるように、顧客からの厳しい選別が始まり、「価格以上の価値」を提供できる企業、飲食店が勝ち残る。軸のブレない「鳥貴族」やメニューを絞り手作り感を打ち出した養老乃瀧グループの「一軒め酒場」、あるいは圧倒的な低価格を売りにするゲリラ的な展開をする「竹子グループ」などの非チェーン系の勢力が勝っている。今後は、「バイキング居酒屋」などの業態の多様化がさらに進むのだろう。「ワイン業態」「日本酒業態」については、このコラムでも繰り返し述べているように、「価格軸から価値軸へのパラダイムの転換」というマーケットの軸トレンドとしてますます大きな波となってくるだろう。「ワイン業態」は、円高による輸入ワインの価格低下も追い風。いまやボトル2,000円台が主流。業態の多様化も進み、ガッツリ系の料理を出す食事志向の「ワイン食堂」が注目される。また、地域密着型の極小店舗(マイクロ・バル)が増え、使い勝ってのいい“ポスト居酒屋”のポジションになる。「日本酒業態」もワイン業態と同様、価値軸シフトの動き。そこに「地方活性化」「国産への見直し」といった時代背景もある。酒蔵の世代交代による新感覚の日本酒開発が広がり、それを発掘して売り出す新世代の飲食経営者も登場。トレンドセッターとして、女性タレントなどのインフルエンサー率いる“ポン女”グループの存在も大きい。「単価を上げたければ、ワインと日本酒」。これが今年のセオリーだ。「オンリーワンメニュー」とは、圧倒的な“差別化メニュー”である。生産者とのコラボ、流通革命を通じて低単価高品質の食材やオリジナルブランド食材を開発して提供する。魚ばかグループの「いかセンター」や九州の朝どれの鮮魚を東京でその日に出す「日本橋紀ノ重」などはその事例である。また、原価を度返ししたような常識破壊の“トリガーメニュー”を出すことによって、自店の特徴を顧客の記憶に鮮明に焼きこむことも重要だ。盛り付けも大きな皿に綺麗に盛るのではなく、小さな皿にガッツリ盛るスタイルが繁盛店に多い。メニューブックやおススメのメニューシートなども店側の思いを伝えるためにあえて手書きにする例が多い。「オンリーワンメニュー」こそ、最大の販促材料であり、口コミ効果によるリピーターづくりに役立つのだ。そして、最後はやはりツイッターやフェイスブックなどの「ソーシャルメディア」が飲食店と顧客の関係をどう変えるか。これをしっかりと見据えておかないと時代に遅れてしまう。店側からの一方的な情報発信や新規顧客開拓のためのグルメサイト広告、フラッシュマーケティング利用などは告知効果こそあれ、優良顧客獲得、リピーターづくりには役立たなくなる。口コミサイトも“匿名性”への信頼感が崩壊しはじめており、フェイスブックに代表される“実名レコメンド”へ注目が集まるだろう。「同意」「いいね!」などのいわゆる“共感消費”の時代になり、「本物かどうか」「自分と価値が共有できるのか」といった本質志向へと顧客心理は変わっていく。これからの飲食店に求められるのは、そうした厳しい顧客心理に対し「共鳴力」を提供できるかどうか、である。それには「個店力」「個質力」を磨き上げるしかない。それに成功した店に客は集中することになる。 

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