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編集長コラム

2017年飲食トレンド総括と2018年の予測

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。

2017年の外食業界は一言でいうと「大転換期への過渡期」と総括することができるだろう。「価格軸」かた「価値軸」へのパラダイム転換の過渡期だ。市場全体のパイが「シュリンク」(縮小)し、「人材難」「原価高」のなかで生き残るには相当の企業努力が必要だ。顧客のニーズの“二極分化”に対応したマーケティング力も問われた1年だったといえよう。


三菱地所最新のビルには「ネオ酒場」が

2月にグランドオープンした大手町1丁目1番地の超高層ビル、大手町タワー・JXビルと大手町パークビルディングからなる三菱地所の再開発プロジェクト「大手町ホトリア」内の商業施設“よいまち”。2つのビルを繋ぐ地下街はいろいろな“良・宵・酔”を集めた飲食街“よいまち”が開業した。なかでも大手町パークビルディングの地下はカジュルビストロから肉酒場、海鮮酒場、立呑み業態まで14店鋪が並び、街場の横丁のような雰囲気に仕上がっている。しかも出店するその多くが新世代のオーナー企業の新業態や初オフィスビル進出となった。

注目されたのは、トランジットジェネラルオフィスは博多で人気のうどん居酒屋「二○加屋長介」を運営するニューオーダーとコラボレーションした「二○加屋長介」。糸島産の小麦で作るうどんと約80種類に及ぶ総菜を揃えたうどん酒場。うどんをコンテンツにした呑み屋であるが、その多様な使いこなしが可能な業態はオフィスビルには最も向く業態だ。さらにダルマプロダクションの「ルンゴ」。常に独創的な店造りで業界からも注目される同社。今回も間口16メートル、奥行く4メートルという環境を逆手に、片側はキッチンを囲むカウンター。片方は真ん中に掘り下げた“小下がり”(座敷席)を囲むコの字カウンター。開放感がそのまま酒場の臨場感となっている大胆な空間作りだ。デザイナーは数々のヒットネオ酒場を作り続けているスタジオムーンの新星、乙部隆行氏。いまや「ネオ酒場」のヒットデザイナーとして飲食企業からひっぱりだこだ。

商業施設は“小さくても魅力あるテナント”を誘致

今年は、ターミナル駅近くに中堅デべロッパ―が開発する飲食ビルも続々と開業した。野村不動産の「GEMS」(恵比寿)、ヒューリック「&NEW」(渋谷)、東京建物の「FANDES」(上野)とオープンが続いた。これらの飲食ビルにも、まだ数店舗から10店舗ぐらいまでの多業態をじっくりと育て上げるタイプのベンチャー飲食企業の新業態の出店が相次いでいる。

かつては企業の規模や設立年数、与信力などではじかれていた企業にも誘致のターゲットを広げている。ディべロッパ―はかなりのリスクを覚悟しながらも、“小さくても魅力あるテナント”を求めているのがいまの現実だ。しかし、大きな投資を伴う商業施設出店には躊躇する企業が大半だ。やはり街場の路面店のほうが立ち上がりも回収も早いからだ。それでも、将来の企業ブランドイメージアップや人材確保のために長期的な視点で財務力を強化しながら5~7年回収を覚悟して出店を決める企業も増えている。ディベロッパーはそうした企業を育てるスタンスで、テナントと一体になった商業施設活性化を考える時代に入ったといえよう。

「ネオ酒場業態」がブレークした2017年

“街場でパワーを放つ”“小さくても魅力ある店”だ。街場で元気な繁盛店、予約が取りにくい店とはどういう店か。一つは地域に根差したリピート客に支持された「ネオ大衆酒場」「ネオ酒場」だ。モダンな暖簾にすっきりしたウッド仕様の内装。コの字型カウンターには大きな煮込み系の鍋。椅子の感覚は狭く、カウンターから客が埋まり、店の空気感が生まれる。客と店のスタッフとの距離が近い。客同士の出会いもある。料理は手づくり感があり、自然の素材、自家製の調味料を使った家庭料理的なものが多い。

30年、50年と続く「老舗大衆酒場」や「大衆割烹」「炉端」などをモダンにアレンジした「ネオ大衆酒場」「ネオ酒場」がこの1年、急速に増えている。客単価は「ネオ大衆酒場」が2500円から3000円、職人がいて煮炊きする「ネオ酒場」は4000~5000円、こだわった日本酒やワインも提供する「ネオ割烹」「ネオ炉端」は5000~7000円だろうか。洋業態では、もはやバルの時代は過ぎ、「ネオビストロ」「大衆ビストロ」がいま人気だ。ワインがぶ飲み系は肉業態とくっついて「肉バル」となって流行しているが、これももうすぐ終わるだろう。

「ネオスタンダード」と「イートグッド」が2018年もテーマに

2018年は、「ネオスタンダード」と「イートグッド」が引き続き、飲食トレンドのテーマとなるだろう。「ネオスタンダード」とは、昔から長く続いてきた業態を新しい価値観で再現するということ。そば、うどん、焼鳥、大衆酒場、フレンチ、イタリアンなど、なんでもいい。オーセンティックな本質部分を引き継ぎ、その地域、街の新しい資産として長く根付くような業態にリモデルする。ある飲食店オーナーは語る。「30年、50年続く老舗であるために、いまどんな業態をつくるのか、“逆算”して考えるのです」。この“老舗の逆算”こそが「ネオスタンダード」の発想法だ。一度トラディショナルに回帰、そして現代スタイルにアレンジした新しいスタンダード業態が生まれる。「ネオ酒場」はその典型。スペイン業態などもネオタパス、ネオピンチョスが来るだろう。肉業態も焼肉ベースの新業態にスポットが当たってきている。ドリンクは、「ハイボール」から「レモンサワー」「乙ハイ」へ。

「イートグッド」は長いテーマだ。今後、5年、10年と続いて、ライフスタイルとして定着するだろう。「いいものを食べよう!」だが、もっと深く「食を通じていいことをやろう!」という考え方。「いいこと」とは生産者の皆さんと食材の大事さを共有し、それを飲食店を通じてお客様に真面目に美味しく、楽しく提供しようということ。当たり前のことだが、それをハイレベルでやっていこう。できるだけオーガニックなものを提供する、化学調味料を使わないこと、あるいは「ファームtoテーブル」や「イートローカル(地産地消、地産都消)」「クラフト」「サスティナブル」は当然のこと。敢えてそれを打ち出さなくても、お客さんに伝わるようなスタンスだ。

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