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コラム

「ネオ大衆酒場」業態のチェーン化に注目!

大手居酒屋チェーンが伸び悩むなかで、新興の「ネオ大衆酒場」業態のチェーン展開が好調だ。「ネオ大衆酒場」という概念は、私が独自に創ったもので、「老舗大衆酒場」のエッセンスをベースに、定番メニューや内外装を現代風にアレンジした業態」である。70店舗を超えてきた「串カツ田中」が典型的な業態事例だ。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


「串カツ田中」(経営はノート、代表取締役・貫啓二氏)は関西串カツ専門店と見せて、その実は大衆酒場である。居酒屋と大衆酒場の違いは、その客単価。居酒屋は3000~4000円だが、大衆酒場は2000~3000円である。アルコール類が安いうえに、酒場だからアルコール比率も高い。居酒屋がグループ客が多いとすれば、ネオ大衆酒場は一人客(そのためにカウンターは必須)からファミリー客まで客層は広く、常連比率も高い。ある意味、ネオ大衆酒場はファミレスと近いポジションにある。入りやすさ、自由さ、緩さといったカフェ的な要素もあるのが「ネオ」たるところだ。「串カツ田中」の店頭には、「お子様・ワンちゃん大歓迎です」と書いてある。また、ハードな設備こそないが、「心のバリアフリー」をサービスの一つとして打ち出しており、高齢者や身障者に対しても心の壁をつくらず、気軽な声がけ、思いやり、寄り添う気持ちを大事にしている。

「串カツ田中」に次いでチェーン化を加速させているのが、名古屋を中心に展開しているブルームダイニングサービス(代表取締役・加藤弘康氏)の注目業態「がブリチキン。」。板メニューは「からあげ」と「骨付鳥」。同店秘伝のタレがしっかり染み込んだジューシーな肉とサクサクの揚げ立て衣が後を引く「からあげ」は、100g単位で注文可能。昨年の2月の東京初進出を果たし、その後、新橋、お茶の水、高田馬場、蒲田と出店。現在、全国で15店舗を超え、関東でも出店計画が目白押し。海外では、バンコクと上海に出店が決まっている。関東エリアのフランチャイザーは「串カツ田中」のFCとして西葛西店、木場店、両国店、川口店なども展開しているダイニングエッジインターナショナル(代表取締役・升本甲一氏)。ベンチャーリンク出身とあって、チェーン展開、店舗開発は得意だ。「がブリチキン。」は、鶏業態とハイボールの低原価率商品を売りにするシンプルな大衆酒場業態だけに、経営側からすると展開メリットも大きい。

都内で24時間営業の居酒屋「酔っ手羽」を10店舗展開するプロジェクトM(代表取締役・村山有志)が2月23日に五反田にオープンしたのは「大衆酒場 酔っ手羽横丁」。東口駅前の裏路地にレトロ風にエッジングされた看板と提灯が大衆酒場の匂いを通り放つ。一本奥の路地には、老舗大衆酒場でサワー発祥の店「もつ焼き ばん」がある。「酔っ手羽横丁」は手羽先と餃子を名物メニューとして打ち出しているが、その他にも刺身、串焼きはじめ数多くのメニューが並ぶ。24時間営業だから、いつどういう客が来ても対応できるようなフルラインナップ。ドリンクもこだわり系から定番まで豊富。激辛の「ジョロキアレッドアイ」や「ロシアンテキーラなどエンタメ感たっぷりのドリンクもある。まさにネオ系の大衆酒場業態の事例として展開を注目していきたい。渋谷には2月20日、大阪から「道頓堀 くれおーる」が東京初出店。メインはたこ焼きだが、手の込んだ“たこ焼き創作料理”が売りだ。その他、串カツ、鉄板焼きもあり、ドリンクも「大阪チューハイ」をなどメニュー全体が「ネオ大阪大衆酒場」だ。景気は戻り、高単価業態へのシフトの動きも見られるが、アベノミクスの恩恵にあずかれない庶民の味方「ネオ大衆酒場」マーケットはますます拡大するだろう。

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