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コラム

「ビストロ」業態が再注目される理由

ワインバル業態が落ち着きを見せるなかで、最近出店が俄かに増えているのがバルよりもワンランク上の料理を出し、上質のワインと共に味わうスタイルのビストロ業態だ。ガブ飲み系ワインバル"から"味わい系ビストロ"へのシフトの動きを追ってみよう。"

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


ワインバルがひしめく神田。2月8日、西口にオープンしたのがカジュアルに本格フレンチを楽しむ「ビストロ ブルックキッチン」。イメージはニューヨーク郊外のブルックリン。ハイセンスながら居心地が良い空間は女性同士でも楽しむことができる。「よそ行きではなく普段着で、いろんな人に美味しいものを食べてもらいたい」と言うのは、本格フレンチで36年の経験を持つグランシェフの伊藤俊文氏。「ホテル鹿島の森」「白馬リゾートホテル ラ・ネージュ東館」「ヴィロン」などにシェフとして勤務した経歴を持つ。早くもメディアからの取材が入るなど、注目度が高いビストロの登場である。八丁堀寄りの茅場町駅近くにオープンしたばかりの「ビストロばんごはん」。人形町で日本酒の店「田粋」などを経営する東京フードワークスの新店だが、ビジネス街にあえて女性ターゲットのビストロを出したのは、同社のクリエイティブディレクターの女性が「自分が行きたい店」をつくりたかったから。しっかりした料理とワインをフレンドリーに提供するのがコンセプトだ。いまなぜ、このようにビストロが増えているのだろうか。注目点は、廉価なフレンチというスタンダードなタイプのビストロではなく、オーナーこだわりのコンセプト、食材の専門性を打ち出した特化した料理、そして“そこそこ高いワイン”を提供する“味わい系ワインビストロ”への流れだ。そこそこ高いワインというのは、ボトル2000円台が主流となった“ガブ飲み系ワインバル”の増殖によってワインが身近にはなったものの、同時に安いだけの粗悪なワインが氾濫し、「やはりちゃんとしたワインが飲みたい」という空気が広がってきていることが背景にある。また、日本酒へ走る女性も増え、「美味しい日本酒を飲んだら、もう安いワインには戻れない」という声も最近よく聞かれるようになった。銀座3丁目のビルの地下にひっそりとオープンした「ビストロ ケイスケ」。なんと、海老ラーメンで有名な「けいすけ」ブランドの新業態。夜の客単価は前菜、メイン、〆のラーメン、ワインを飲んで5000~6000円。ワインは3000~4000円台がボリュームゾーン。このゾーンがこれからのビストロにおけるワイン価格の主流になるのではないか。ユニークなコンセプトのビストロは続々と増えている。新橋の「江戸前ビストEDOGIN」は、和食とフレンチの優れた部分を取り入れた“江戸前フレンチ”。初代魚屋からスタートした「江戸銀」から4代目となるオーナーが「新ばし江戸銀」閉店後、新たにビストロとして再出発した店だ。海老クリームコロッケのアメリケーヌソースや自家製ごまダレ鯛茶漬けなどが売り。恵比寿にオープンした酪農農家ビストロ「スブリデオレストラーレ」は、35種類のチーズを揃えたチーズ料理とワインが味わえるビストロ。独特の調理器具で野菜にチーズを溶かしてかけるスイス伝統料理ラクレットが味わえる。下遠野亘氏率いるスパイスワークスの1号店がリュニーアルした水道橋の馬肉ビストロ「shigotouma仕事馬」。馬肉で作るビストロ料理をコンテンツにした店で、下遠野氏ならではの遊び心が空間だけでなく、料理にも、サービスにも溢れている。ワイン業態のトレンドは“ガブ飲み系ワインバル”からワンステップ上のネオ・スタイルの“味わい系ワインビストロ”に確実にシフトし始めている。

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