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編集長コラム

いま、アジアの飲食マーケットが熱い(クアラルンプール編)

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。

8月4~9日、日本の繁盛店オーナーたちとマレーシアの飲食マーケット視察の旅を行った。首都クアラルンプール(KL)に3泊、残りの2泊はリゾート地として知られるランカウイ島に滞在した。「ハラル」のイメージが強調されるマレーシアだが、今回の視察ではハラル的な縛りはまったく感じなかった。やはり、他の東南アジア諸国と同様、飲食マーケットを主導しているのは、「中華系マレーシア人」だった…。


クアラルンプールに降り立つのは、7年ぶりのことだった。実は2008年、私はある政府系関係者と東京で出会い、「マレーシア政府公認のレストランの移転オープンを手伝ってほしい」と頼まれ、プロデュースを引き受けた。その時期に数度、市場調査のためにクアラルンプールを訪問し、さまざまなレストランを食べ歩き、主要なモールも見て回った。そのときの記憶は、「とにかく何を食べても美味しい」「日本人の口に合う料理が多い」ということと、ムスリム(イスラム教信者)が人口の6割もいる国にしては、ローカル繁盛店では皆、酒を飲み、西洋的な食事も好んでいたということ。そして、ブキッ・ビンタンの屋台街「アロー通り」の賑やかさが印象的だった。今回、7年ぶりにそのアロー通りを歩いたが、賑わいはいっこうに変わっていなかった。それよりもなによりも、クアラルンプールの気候は最高だった。一年を通して30度前後、空気が乾燥していて、それほど暑くは感じない。雨も少なく、滞在中は天気が良くなかったが、雨が降っても一瞬で晴れ間に変わる。治安も良く、タクシー代は安い。他の東南アジアの都市に比べてると、非常に過ごしやすいと思った。

今回、現地アテンドをお願いしたのは、2012年マレーシア現地法人 M&M ARC Sdn.Bhd.を設立し、レンタルオフィス、飲食店経営、人材紹介業、訪日ムスリム向けのアプリ「ハラルナビ」事業などを手がけている恵島良太郎氏。日本では、「ファンくる」「グルメリザーブ」など、飲食店を支援するwebサービス事業を展開しているが、家族でマレーシアに移住し、本人は日本とマレーシアを二週間ごとに往復する生活を送っている。恵島氏が第二の生活と仕事の場をマレーシアに決めたのは、家族面では「生活コスト」、「安全性」、「学校」、「英語が使えるか」、そしてビジネス面では、「税金」、「人口の伸び」、「経済成長率」、「一人当たりGDPの伸び」などを総合的に比較採点し、「マレーシアが最も点数が高かったから」と言う。恵島氏はそのライフスタイルの快適さを証明しようと、我々を社宅にしているコンドミニアムに連れっていった。2ベッドルーム、150㎡の高層の部屋が月家賃15万円で借りられる。プールはもちろん、眺望最高のゲストルームもいつでも利用できる。クアラルンプールの名所ツインタワーを遠目に眺めながら、「この部屋をウチの社員は自由に使えます。クアラルンプールで働くメリット、幸せ度は、他の都市を圧倒してますよ」と恵島さんは胸を張った。

恵島氏のマレーシアにおける飲食ビジネスは“1勝1敗1分”。最初はあるモールでドーナツショップを開店するも、2週間のトライアルで撤退。2回目はシェラトンホテルからの話で、200坪の日本食レストランを開店するが、初期投資が当初計画の3倍近くかかり、運営費も重く赤字が続いて8ヶ月で株を売却。パートナー選びとマネジメントを人任せにしていたことが失敗の理由。そして、3回目のトライ。今度はパートナーとして日本の寿司職人を選び、マネジメントもしっかりと自社で管理。業態は高級鮨店「織部」だが、現地の富裕層やセレブ客を常連に取り込んで成功している。「マーケティング的にも日本の高級鮨スタイルと素材をそのまま提供したのが良かった」(恵島氏)と言う。客単価は1万5000~2万円だ。我々が遅いランチで訪ねたときには、ガードマン付のVIPがデートに使っていた。世界から有名人も指名で予約を入れてくるそうだ。クアラルンプールの日本食レストランマーケットは、このような高級店がかつては主流を占めていた。ある意味、ターゲットを中華系富裕層に絞っていけば、安定的な経営が可能である。

しかし、最近のトレンドとしては、経済成長にともなって国民の所得も増え、中間所得層ターゲットのマーケットが活性化している。そうした状況の変化を、JETROレポートではこうまとめている。(2012年JETRO「マレーシア日本食品消費動向調査」より引用)
1、高級店から大衆化へ
2、シンガポールの流行がマレーシアへ
3、正統派日本食レストランから専門店へ
4、ショッピングモールから住宅街へ
「大衆化」「専門化」の流れは、今回の視察でもまさに肌で感じた。モールを覗けば、ラーメン店、うどん店、とんかつ店、焼き鳥店、牛丼店などの専門店がひしめく。日本人居住者が多いモントキアラに隣接するデサスリハタマスの平屋型モー内に7月にオープンしたばかりのバイタリティ(岩田浩社長)の炭火焼鳥「鶏鬨」を覗いてきたが、日本人客だけでなくローカル客にも大変な人気だという。恵島氏が出店をサポートしたが、今度はバイタリティの肉業態「新日本焼肉党」を誘致したいと準備している。日本の個店系飲食企業がクアラルンプールに出店するチャンスはこれから増えてくるだろう。大型のモールには大手チェーン系の出店が増えていくだろうが、住宅街、新興の街場エリアには「鶏鬨」のような個店系飲食店が似合う。JETROレポートにもあるが、これからのターゲットは「中華系セカンドジェネレーション」だ。彼らは日本食+アルコールとの組み合わせを志向する。モール内では一食100~200リンギット(300~600円)の食事ですませるが、街場では2000~3000円使って食事と酒を楽しむ。専門特化型の居酒屋やバルはこれから狙い目ではないだろうか。

エリア的にこれから注目なのが、クアラルンプール市内から車で15分ほどの高級住宅街バングサ。高級ブランドショップが入ったモールもあるが、ゆるやかな坂道の小さな街におしゃれなレストランやカフェが並んでいる。欧米人客が多い街でもある。このなかにある老舗のスペイン料理「エルメゾン」を覗いてきた。同行したグローバルダイニング出身のオーナーは、人気のパエリアを食べながら、「この街ですかね、私が店を出すとしたら…」とつぶやいていた。まだ、日系飲食オーナーはほとんど未開拓のエリア。ここのスケール感のあるクールなネオジャパニーズスタイルのレストランが出来たら最高だろう、と私も想像を膨らました。「モールより街場」。これは個店系飲食企業がこれからクアラルンプールに出てくる際のキーワードになるだろう。クアラルンプールの首都圏は「クレンバレー」といわれる。このクレンバレ―の人口はいま750万。2010年には1000万人に膨らむと予測されている。そのクレンバレーマーケットをリードするのはムスリムではなく、若い世代の「中華系セカンドジェネレーション」だ。彼らはトレンドセッターになって、クアラルンプール飲食マーケットはどんどん進化を遂げていくに違いない。

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